目次
女性獣医師の年代別の割合

「女性獣医師として長く働き続けたい」
「女性獣医師が働きやすい職場の特徴は?」
獣医師として経験を積んできたものの、結婚や出産などのライフイベントによって家庭と両立できるか不安に感じている女性獣医師もいるでしょう。
本記事では、女性獣医師が働きやすい職場の特徴について解説していきます。
また、女性獣医師が活躍している職種や自分に合っている職場の見極め方についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
女性獣医師の年代別の割合

女性獣医師の年代別の男女比の割合を見ると、年齢とともに女性獣医師が獣医療の現場から離れていることがわかります。
以下は、女性獣医師の年代別の割合を示した表です。
年代 | 女性獣医師の割合(男女比) |
---|---|
20代 | 54.8% |
30代 | 43.9% |
40代 | 48.3% |
50代 | 31.5% |
60代 | 15.2% |
70代 | 8.0% |
参照:農林水産省「獣医事をめぐる情勢 令和6年2月」
20代のうちは獣医師全体のうち、女性獣医師は54.8%で、半数以上を占めています。
しかし、30代から40代にかけては40%台に減少し、50代では約30%、60代ではわずか15%となっています。
女性が働き続けられる環境を整備することが、獣医療業界の課題の一つといえるでしょう。
女性獣医師の平均年収

厚生労働省が2023年に発表した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、女性獣医師の平均月収は38.2万円、平均年収は539万円です。
一方、男性獣医師の平均月収は54.9万円、年収は762.8万円で、女性獣医師の年収は男性よりも約224万円低いことがわかります。
性別 | 平均月収(令和5年度) | 平均年収(令和5年度) |
---|---|---|
女性 | 38.2万円 | 539.0万円 |
男性 | 54.9万円 | 762.8万円 |
参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
女性獣医師の年収が男性より低い理由の一つとして、長期的なキャリアを築きにくいことが挙げられます。
女性が獣医師を続けるのが難しい理由については、次章で詳しく解説していきます。
女性が獣医師を続けるのが難しい4つの理由

女性が獣医師を続けるのが難しい理由は、以下の4つです。
- 労働時間が長いため
- 休暇が取りづらいため
- 心身ともに負担が大きいため
- 仕事量に対して給料が見合わないため
それぞれ詳しく見ていきましょう。
労働時間が長いため
女性が獣医師を続けるのが難しい理由の一つは、労働時間が長いことです。
動物病院勤務の獣医師は、診療や手術、急患対応など業務が多岐にわたります。
緊急対応が発生すると、予定通りに業務が進まず、時間外労働が発生することも少なくありません。
ペット医療DXを行う株式会社TYLが2022年に実施した「働き方に関する意識調査」によると、約7割の獣医師が「働き方改革がまったく進んでいない」「働き方改革がほとんど進んでいない」と回答していました。
獣医療業界はまだまだ労働環境が整っておらず、改善が見込めない職場では、女性獣医師が現場を離れていると考えられます。
とくに子育て中の女性にとって、長時間労働は大きな負担となります。
女性獣医師が仕事を続けるためにも、労働時間の改善は大きな課題といえるでしょう。
休暇が取りづらいため
動物病院で働く獣医師は、夜間や休日に呼び出されることが多く、休暇を取りづらい環境にあります。
とくに小規模な病院では、人手不足により休暇が取りづらいでしょう。
株式会社TYLが2023年に行った「獣医師の働き方に関する意識調査」によると、獣医師の約6割が獣医療業界は人材不足だと感じており、育児休暇については3人に1人が取りづらいと回答していました。
休暇制度が整っていない職場では、ワークライフバランスを保つのが難しくなります。
そのため、女性が獣医師を続けるには、休暇制度が整った動物病院への転職や、パートタイム・時短勤務への切り替えなど、ライフスタイルに合った働き方を選ぶ必要があるでしょう。
心身ともに負担が大きいため
女性獣医師が仕事を続けるのが難しい背景には、心身への負担が大きいという現実があります。
獣医師は、動物の命が自分の治療にかかっているため、常に強いプレッシャーの中で働かなければなりません。
また、動物の診察や手術、飼い主への対応などで1日中立ちっぱなしで動き回ります。
牛や馬などの大動物を扱う職場の場合は、さらに体力が必要です。
獣医師の仕事は心身への負担が大きく、体調を崩したり、妊娠や子育てとの両立に悩んだりして、職場を離れてしまう女性もいるでしょう。
仕事量に対して給料が見合わないため
公務員獣医師の業務には、行政機関特有の規制や手続きが多いため、柔軟な対応が難しくストレスを感じてしまいます。
たとえば、専門性を身につけていても、1つの案件に対して獣医一人では判断ができません。行動を起こす場合は、複数の部署との協議や、上司からの承認を得る必要があります。
問題を解決するために新たな提案をしても、規則や手続きに手間がかかったり、承認されないこともあるためつまらないと感じてしまいます。
能力に見合った給与を得られない
仕事量に対して給料が見合わないことも、女性が獣医師を続けるのが難しい理由の一つです。
獣医療の現場では、高度な知識と技術が要求される一方で、他の医療職と比べて給与水準が低いという現実があります。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、女性の医師・歯科医師・獣医師の平均月収は以下のとおりです。
職種 | 平均月収 |
---|---|
医師 | 87.5万円 |
歯科医師 | 53.0万円 |
獣医師 | 38.2万円 |
参照:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
獣医師の月収は、人を診療する医師の半分以下となっています。この待遇の低さから、獣医療業界から離れる女性も少なくありません。
女性獣医師が長く働き続けるためには、給与水準の引き上げや、時間外労働の削減などの労働条件の改善が不可欠です。個人レベルでは、条件のよい職場への転職を検討するのも一つの選択肢です。
女性獣医師が働きやすい職場の特徴5選

女性獣医師が働きやすい職場の特徴は、以下の5つです。
- 時短勤務を導入している
- 福利厚生が充実している
- 適切な人数のスタッフが揃っている
- キャリア支援制度が整っている
- 女性獣医師が勤務している
それぞれ詳しく解説していきます。
時短勤務を導入している
子育てや家庭の事情により、フルタイムでの勤務が難しい女性にとって、時短勤務を導入している職場は働きやすいといえるでしょう。
時短勤務とは、3歳未満の子どもがいる労働者に対して、1日の所定労働時間を短くする働き方のことです。通常は1日8時間の勤務が、6時間になるため、子育てと仕事を両立しやすくなるでしょう。
なお、雇用形態別の働き方については「獣医師の働き方を雇用形態別・職場別で6パターン紹介!理想の働き方を見つける手順も解説」で詳しく解説しているので、合わせてチェックしてみてください。
福利厚生が充実している
福利厚生が充実していることも、女性獣医師が働きやすい職場の特徴です。
具体的には、以下のような福利厚生が整備されている職場をおすすめします。
- 産休・育休制度
- 介護休業制度
- 職場復帰支援プログラム
- 社会保険
- 退職金制度
- 住宅手当
- 繁忙手当
- 賞与
とくに、将来的に出産や育児を考えている女性獣医師にとって産休・育休制度は必須です。転職を検討している場合は、実際に産休や育休の取得実績があるかも確認しましょう。
アニマルジョブでは、福利厚生が充実している動物病院の求人も多数掲載しています。産休・育休制度の取得実績のある求人も取り揃えているので、気軽にお問い合わせください。
適切な人数のスタッフが揃っている
女性が働きやすい職場の特徴には、適切な人数のスタッフが揃っていることも挙げられます。診療スタッフや事務スタッフが複数名いる職場や、一人当たりの業務量がほどよい職場が理想的です。
とくにスタッフの人数が多ければ、子どもの急病で休む場合も、代わりの人員を確保しやすくなります。忙しすぎて不穏な雰囲気になることもなく、お互いに助け合いながら働けるでしょう。
キャリア支援制度が整っている
キャリア支援制度が充実している職場は、女性獣医師にとって働きやすい環境といえます。
たとえば、学会やセミナーへの参加費補助制度や研修制度が整っている職場は、長期的なキャリアを築きやすいでしょう。
また、新しい知識や技術を学ぶ機会が増えることで、仕事へのモチベーションも高まります。日々進歩する獣医療の世界で、常にアップデートされた情報を得られる職場は、女性獣医師のキャリア形成に大きく貢献するでしょう。
女性獣医師が勤務している
女性獣医師が働きやすい職場の特徴として、女性獣医師が勤務していることも挙げられます。ロールモデルとなる先輩がいると、自分の目指すべき姿ややるべきことが明確になり、今後のキャリアをイメージがしやすくなります。
ロールモデルとは、仕事やキャリアを考える上で、考え方や言動が模範となる人物のことです。とくに、出産や育児などの家庭との両立を乗り越えた先輩獣医師がいると、より具体的なアドバイスを得やすいでしょう。
女性獣医師が活躍している職種

女性獣医師が活躍している職種は、以下のとおりです。
- 小動物診療
- 産業動物診療
- 民間企業の獣医職
それぞれ詳しく解説していきます。
小動物診療
小動物診療とは、犬や猫、鳥類などの小動物を対象に行う診療を指します。小動物の診療を行う獣医師は、一般的に動物病院で勤務しており、女性獣医師も活躍しています。
実際には、獣医師全体の46%が動物病院で働いていており、そのうち約4割が女性獣医師です。
動物病院では、正社員、契約社員、アルバイト、パートなど、勤務形態の選択肢が豊富なため、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。動物病院での仕事内容は、診察や治療、予防接種、手術、飼い主へのアドバイスなど多岐にわたります。
小動物臨床獣医師の詳しい仕事内容については、「小動物臨床獣医師の仕事内容を徹底解説!やりがいやなり方も紹介」で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。
産業動物診療
産業動物診療は、牛、豚、羊などの家畜や農業動物を対象とする診療のことです。動物の命を救うことが目的ではなく、人の健康や安全を守ることを目的に動物の診療を行います。
獣医師全体の12%が産業動物獣医師として働いています。
産業動物獣医師のうち、約2割は女性獣医師です。10年前と比較すると、女性獣医師の数は約1.8倍に増加しており、女性も活躍しやすいと考えられます。
民間企業の獣医職
民間企業の獣医職は、福利厚生が整備されている職場も多く、女性獣医師が活躍しています。
民間企業は医療現場とは異なる視点で獣医学に関わり、製品の研究開発やマーケティング、営業など多様な働き方が可能です。
民間企業で働く獣医師の具体的な勤務先は以下のとおりです。
- 製薬会社
- 食品会社
- 飼料会社
- ペットフードメーカー
- ペット保険会社
求人は正社員や契約社員が多く、アルバイトやパートの募集はあまり見られません。しかし、時短勤務や産休・育休制度を利用できる企業では、ライフスタイルの変化に応じて柔軟に働けます。
女性獣医師が自分に合った職場の見極め方

女性獣医師が自分に合った職場を見極める方法は、以下の3つです。
- 就業前の実習で職場環境を確認する
- ホームページや求人情報を確認する
- 口コミを確認する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
就業前の実習で職場環境を確認する
女性獣医師が自分に合った職場を見極める方法として、就業前の実習に参加するのがおすすめです。
先輩獣医師やスタッフと一緒に働くことで、職場の雰囲気を把握でき、馴染めそうかを判断できます。また、自分のスキルや適性に合った仕事内容であるかも確認できるでしょう。
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ホームページや求人情報を確認する
自分に合った職場を見つけるためには、職場の公式ホームページや求人情報を確認することも重要です。
公式ホームページの診療方針や施設紹介、スタッフの紹介などをチェックすることで、職場の価値観や雰囲気をつかめます
また、求人情報では、勤務条件や給与、福利厚生なども詳細を確認しておきましょう。なかには、女性スタッフの比率が掲載されている求人もあります。
また、女性獣医師の在籍状況や育児休暇の実績などは、働きやすさを判断する指標となるでしょう。
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口コミを確認する
口コミを見れば、ホームページなどではわからない職場の実態を把握できる可能性があります。ただし、口コミには個人の主観が含まれているため、すべてを鵜呑みにするのは危険です。あくまでも参考程度に留めておきましょう。
まとめ|ライフスタイルに合った職場で女性獣医師として活躍し続けよう

獣医師業界では、20代のうちは男女比に差はありませんが、年齢とともに女性獣医師が現場から離れる傾向があります。
この背景には、結婚や出産、子育てによって仕事との両立が難しくなり、獣医を辞める女性が多いことが影響しています。
女性が獣医師として活躍し続けるには、働きやすい職場を選ぶことが大切です。就業前の実習やホームページ、求人情報などで職場をリサーチし、ライフスタイルに応じて働き方を変えながら、獣医師としてのキャリアを築いていきましょう。