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小動物獣医師とはペットを診療する獣医師のこと

小動物獣医師とは、犬や猫、ウサギなどのペットを対象に診療を行う獣医師を指します。一般的には動物病院に勤務しており、予防接種や病気の診断、治療、手術など、さまざまな獣医療に携わっています。
また、飼い主と直接コミュニケーションをとりながら、ペットの健康維持や病気予防のためのアドバイスを行うのも小動物獣医師の業務の一つです。そのため、飼い主の言葉に耳を傾け、適切なサポートを行うことも求められます。
小動物獣医師は、動物に対して医療を提供するだけでなく、飼い主とペットの幸せを支える職業です。
小動物獣医師の平均年収

アニマルジョブの求人に記載されている情報によると、小動物獣医師の年収は380〜500万円程度です。
一方、厚生労働省が2023年に発表した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、獣医師全体の平均月収は49.1万円、平均年収は約685.7万円です。
小動物獣医師の年収は、一般的な獣医師と比較するとやや低い傾向にあります。
また、国税庁が2023年に調査した「民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は460万円とされており、小動物獣医師の年収とあまり差がありません。ただし、専門分野を極めたり開業したりすることで、小動物獣医師として年収アップを狙うことも可能です。
次に、産業獣医師・公務員獣医師と小動物獣医師の年収をそれぞれ比較していきます。
産業獣医師と年収を比較
産業獣医師とは、牛や馬といった家畜や農業動物の診療に携わる獣医師を指します。
産業獣医師の年収に関する公式なデータはありません。そのため、産業動物を主に扱っているNOSAI(農業共済組合)の獣医師採用情報を参考に、産業獣医師の年収を算出しました。
職種 | 平均月収(手当を含む) | 平均年収(ボーナスを含む) |
---|---|---|
産業獣医師 | 約25〜31万円 | 約400〜480万円 |
上記は採用直後の年収のため、特有の手当が上乗せされたり、勤務年数を重ねることで、年収はさらにアップすることが見込まれます。
公務員獣医師と年収を比較
公務員獣医師は、地方公務員と国家公務員に分かれており、それぞれの給与体系は異なります。地方公務員と国家公務員の月収や年収は以下のとおりです。
職種 | 平均月収 | 平均年収(ボーナスを含む) |
---|---|---|
地方公務員獣医師 | 約30.9万円 | 約510万円 |
国家公務員獣医師 | 約35.8万円 | 約590万円 |
【参考】総務省「令和5年地方公務員給与の実態 第1 調査結果の概要」
人事院「令和5年国家公務員給与等実態調査の結果」
内閣官房「国家公務員の給与(令和6年版)」
地方公務員獣医師は、地域に根ざした防疫や家畜衛生に携わることが多く、給与は地域や業務内容によって異なります。
一方、国家公務員獣医師は、全国的な規模での政策実施や研究に従事しており、地方公務員獣医師よりも年収は高水準です。
公務員獣医師は安定した給与や福利厚生があることから、小動物獣医師よりも高い年収を得られます。
獣医師の男女比年収(年齢別)

獣医師における男女の年齢別の月収・年収比は以下のとおりです。
年齢 | 男性の平均月収 | 女性の平均月収 | 男性の平均年収 | 女性の平均年収 |
---|---|---|---|---|
20~24歳 | 41.7万円 | 29.2万円 | 500.4万円 | 362.2万円 |
25~29歳 | 38.6万円 | 34.4万円 | 500.0万円 | 473.5万円 |
30~34歳 | 53.4万円 | 34.2万円 | 731.8万円 | 499.7万円 |
35~39歳 | 53.8万円 | 41.1万円 | 764.0万円 | 566.0万円 |
40~44歳 | 60.0万円 | 56.5万円 | 849.1万円 | 814.3万円 |
45~49歳 | 68.5万円 | 44.0万円 | 965.8万円 | 614.8万円 |
50~54歳 | 83.5万円 | 46.1万円 | 1193.1万円 | 684.3万円 |
55~59歳 | 83.5万円 | 27.9万円 | 1187.5万円 | 447.3万円 |
60~64歳 | 46.8万円 | 27.9万円 | 658.4万円 | 431.1万円 |
65~69歳 | 66.3万円 | – | 795.6万円 | – |
70歳~ | 40.0万円 | – | 480.0万円 | – |
【参考】厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」
この表からわかるように、男性の方が全体的に年収が高い傾向にあります。とくに30代以降はその差が顕著です。
男女間の年収差の背景には、育児・介護と仕事の両立ができず、女性獣医師が現場から離れていることが考えられます。
今後、男女の賃金格差を解消するためには、労働環境の改善や、女性獣医師のキャリアアップを支援する取り組みが必要です。
女性獣医師の働き方については「女性獣医師が働きやすい職場の特徴5選!活躍している職種や見極め方も紹介」詳しく解説しているので、気になる方はチェックしてみてください。
開業後における獣医師の年収

獣医師として動物病院を開業した場合、平均年収は約800万円です。ただし、これはあくまで平均値であり、実際の年収はさまざまな要因によって変動します。
たとえば、開業する地域の経済状況や病院の規模、専門とする診療科目、経営手腕などが年収に大きく影響します。
また、初期費用や設備投資などの負担が大きく、開業後すぐに安定した収入を得るのは容易ではありません。そのため、開業を成功させるには、入念な計画やマーケティング戦略が不可欠です。
獣医師の開業については「動物病院を開業した獣医と勤務医の年収を比較!年収アップの秘訣3選も紹介」で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。
小動物獣医師の年収が低いといわれる理由

小動物獣医師の年収が低いといわれる理由は、以下のとおりです。
- 若いうちは一般企業の年収と同程度のため
- 労働時間が長く収入に見合わないため
- 獣医療は保険制度が整備されていないため
それぞれ詳しく解説していきます。
若いうちは一般企業の年収と同程度のため
前述したように、小動物獣医師の年収は380〜500万円程度で、給与所得者の平均年収460万円と同程度です。とくに、若手獣医師の場合は、平均年収に達しないこともあるため「小動物獣医師は年収が低い」と認識されやすいでしょう。
しかし、経験を積んで技術や専門性が高まると、より質の高い診療を提供できる獣医師として評価されるようになり、年収アップが期待できます。
労働時間が長く収入に見合わないため
労働時間が長く収入に見合わないことも、小動物獣医師の年収が低いとされる理由の一つです。小動物獣医師は、通常の診療時間だけでなく、夜間や休日にも緊急対応を求められることがあります。
シフト制であっても、実際には長時間労働を強いられることもあります。そのため、働いた時間に対して報酬が見合わないと感じる獣医師もいるでしょう。一見給料が高く見えても、実際には時給換算すると思っているよりも低くなることがあります。
このような状況から、長時間働いても思うように収入が増えないと感じる小動物獣医師が多く、年収が低いといわれる理由となっています。
獣医療は保険制度が整備されていないため
小動物獣医師の年収が低い理由として、獣医療における保険制度が整備されていないことも挙げられます。
人間の医療では健康保険が適用されるため、患者は医療費の一部だけを払えば済みます。しかし、獣医療は自由診療のため、飼い主が治療にかかる費用を全額負担しなければなりません。
そのため、診療や手術にかかる費用が高額になることが多く、飼い主が経済的な理由で治療を選択しない場合もあります。
小動物獣医師の年収は飼い主の経済状況や、動物が抱える病気の種類などによって大きく左右されるため、収入が安定しにくい側面があります。そのため、年収が低いといわれているのです。
小動物獣医師が年収を上げる4つの方法

小動物獣医師が年収を上げる方法は、以下の4つです。
- 待遇のいい動物病院に転職する
- 管理職に昇進する
- 専門性を高めて転職する
- 動物病院を開業する
それぞれ詳しく解説していきます。
待遇のいい動物病院に転職する
小動物獣医師が年収を上げるために、待遇のいい動物病院に転職するのも一つの選択肢です。動物病院によっては、勤務時間が柔軟で、ライフスタイルに合わせた働き方ができたり、ボーナスや福利厚生が充実している職場もあります。
転職活動を始める際は、応募先を徹底的にリサーチすることが重要です。給料や勤務条件だけでなく、職場の雰囲気やスタッフの人数なども確認し、働きやすい環境を見つけましょう。
獣医師特化の求人サイト「アニマルジョブ」の求人情報は、給与や福利厚生が詳細に記載されています。職場の雰囲気を動画でチェックできる求人もあるので、求人探しにぜひご活用ください。
管理職に昇進する
小動物獣医師が年収を上げるには、管理職に昇進する方法もあります。管理職になると責任が増す分、年収アップが期待できます。管理職を目指すには、同じ動物病院で経験を積み、スタッフや飼い主からの信頼を得ることが大切です。
また、獣医師としての医療技術はもちろん、チームをまとめるマネジメント能力も求められます。分院長などのポジションに就くことで、さらなる年収アップが見込めるでしょう。
専門性を高めて転職する
小動物獣医師が年収を上げる方法として、専門性を高めて転職するという選択肢もあります。特定の診療分野の知識を深めることで、より高い報酬を得られる可能性が高くなります。
専門性を高めるためには、セミナーや学会に参加することが効果的です。また、認定医の資格を取得するのも、専門性をアピールするよい方法です。
特定の診療分野に特化し、高度な診療技術を身につけることで、二次診療を行う動物病院に転職しやすくなります。二次診療の動物病院では、高度な医療を提供しているため、一般的な動物病院よりも高い年収が期待できるでしょう。
動物病院を開業する
動物病院を開業するのも、小動物獣医師が年収を上げる方法の一つです。開業すれば自分で診療料金を設定でき、経営が軌道に乗れば高収入が見込めます。
ただし、開業にはある程度の資金と経営ノウハウが必要です。収入が安定するまでには時間がかかることも考慮しなければなりません。また、事前の市場調査や資金計画など、入念な準備が必要です。
開業を考える前に、まずは動物病院で勤務医として経験を積みながら、経営について学ぶことをおすすめします。十分な知識とスキルを身につけてから、開業を検討しましょう。
小動物獣医師が年収1,000万円以上を達成する方法

小動物獣医師が年収1,000万円以上を達成するには、一般的な勤務では難しいです。そのため、戦略的なキャリア形成が求められます。
たとえば、外科手術やエキゾチックアニマル診療などの専門分野で経験を積むことで、他の獣医師と差別化された高度な治療ができるようになり、専門家としての市場価値が高まるでしょう。
また、動物病院を開業する選択肢もあります。開業に成功すれば、年収1,000万円を達成することも十分可能です。
まとめ|小動物獣医師はキャリアを見直すことで年収アップできる

小動物獣医師の年収は、勤務先や役職によって大きく異なります。そのため、年収アップのためには、まずは現在のキャリアを見直し、どのような方向性を目指すかを明確にすることが重要です。
年収を上げる方法としては、転職、昇進、開業など、さまざまな選択肢があります。自分がどのような獣医師になりたいのか、目指したいゴールを設定し、その延長上にある道を選ぶとよいでしょう。
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