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小動物臨床獣医師とは動物病院で働く獣医師のこと

小動物臨床獣医師とは、犬や猫、鳥類などの小動物を対象に診療を行う獣医師のことを指します。基本的には動物病院に勤務しており、予防接種や病気の診断、治療、手術など、さまざまな獣医療に携わっています。
小動物臨床獣医師の仕事は、動物の健康を守るだけではありません。飼い主とのコミュニケーションも大切な仕事の一つです。飼い主にペットの健康管理や病気の予防についてアドバイスを行い、信頼関係を築いていきます。
小動物臨床獣医師の割合

国内で獣医師として活動している人数のうち、小動物診療に携わる獣医師は全体の46%を占めています。
2022年に実施された農林水産省の統計によると、種類別の獣医師数の割合は以下のとおりです。
獣医師の種類 | 割合 |
---|---|
小動物診療 | 46% |
公務員 | 26% |
産業動物診療 | 12% |
その他の分野 | 16% |
小動物診療に次いで多いのが「公務員」として働く獣医師で26%、続いて「産業動物診療」が12%です。「その他の分野」には、動物園や水族館、民間企業などで働く獣医師が含まれています。
このデータから、日本の獣医師のうち小動物診療に携わる獣医師は半数近くを占めており、獣医師のキャリアとしてメジャーな選択肢であることがわかります。
小動物臨床獣医師の主な仕事内容

小動物診療獣医師の主な仕事内容は、以下の5つです。
・診察と治療
・予防接種
・手術
・飼い主へのアドバイス
・緩和ケアの提案
それぞれ詳しく解説していきます。
1.診察と治療
小動物臨床獣医師の最も基本的な仕事は、動物の健康状態を診察し、治療を行うことです。
診察では、飼い主から症状や行動の変化について聞き取りを行い、動物の体重や体温、心音などの基本的な身体検査を実施します。必要に応じて血液検査やレントゲン検査などの精密検査も行います。
診断が確定したら、動物の治療方針を決定し、薬の処方や食事のアドバイス、手術の準備を進めるのも小動物臨床獣医師の役割です。
2.予防接種
ペットの予防接種も、小動物臨床獣医師の仕事の一つです。ワクチン接種は、ペットを感染症から守るために欠かせません。
たとえば、犬には狂犬病ワクチン、猫には猫ウイルス性鼻気管炎や猫カリシウイルスなどの予防接種が行われます。
小動物臨床獣医師は、ペットの年齢や健康状態、生活環境などを考慮して、必要な予防接種を提案します。大切なペットの予防接種に不安を感じる飼い主もいるため、ワクチンの重要性や接種スケジュールを丁寧に説明し、理解と協力を得ることが大切です。
3.手術
小動物臨床獣医師は、病気の治療や予防のために手術も行います。
代表的な手術は、以下のとおりです。
・去勢・避妊手術
・腫瘍の摘出
・整形外科手術
獣医師は手術を行う前に、飼い主に対して手術の必要性やリスク、術後のケアについて十分に説明し、同意を得る必要があります。
手術は、獣医師とスタッフが連携し、動物の安全を最優先に考えながら進められます。術後はペットの回復を見守りながら、適切なケアとフォローアップを行うことも重要な仕事の一つです。
4.飼い主へのアドバイス
ペットが健康でいるために必要な知識を飼い主に伝え、適切なケアができるようにアドバイスすることも、小動物臨床獣医師の仕事の一つです。
たとえば、適切な食事量や運動量、口腔ケアについてアドバイスし、ペットの健康管理をサポートします。
アドバイスをする際は、飼い主の疑問や不安に耳を傾け、丁寧に対応することが重要です。わかりやすい言葉で説明し、納得できるように努めることで、飼い主との信頼関係が深まります。
5.緩和ケアの提案
緩和ケアとは、動物の痛みや苦痛を和らげ、できる限りよい状態で過ごせるようサポートすることです。
小動物臨床獣医師は、病気や老齢に伴う症状に苦しむペットに対し、鎮痛剤の処方やリハビリテーションなどを組み合わせ、生活の質を維持・向上させる役割を担っています。
また、飼い主に対しても、ペットの状態について丁寧に説明し、心理的なサポートを行うことが重要です。
病気の治癒が難しい場合は、飼い主がペットの苦痛を理解し、最適な選択をできるよう導き、ペットと飼い主が最期の時間を穏やかに過ごせるようサポートします。
小動物臨床獣医師の年収

アニマルジョブの求人に記載されている情報によると、小動物臨床獣医師の年収は約380〜500万円が多いです。しかし、この年収は役職や経験年数によって大きく異なります。
たとえば、分院長として働く小動物臨床獣医師は、経営の責任を負っているため年収600〜1,000万円ほどです。分院長とは、動物病院の本院から分かれて設けられた分院のトップを務める医師のことです。
さらに、動物病院を開業した場合、経営が順調にいけば年収1,000万円以上も目指せます。ただし、初期費用や設備投資の負担が大きく、収益が安定するまでに数年かかることを考慮しなければなりません。
このように、小動物臨床獣医師は、経験や役職によって年収の幅が広い職業です。
動物獣医師の年収については、「小動物獣医師の平均年収は?低い理由や上げる方法も解説」で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。
転職して小動物臨床獣医師になるには

転職して小動物臨床獣医師になるための手順は、以下の3ステップです。
1.転職サイトで求人に応募する
2.履歴書を作成し面接対策を行う
3.面接や実習に臨む
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.転職サイトで求人に応募する
転職して小動物臨床獣医師になるためには、動物病院の求人数が多い転職サイトの利用がおすすめです。
一般的な転職サイトはあらゆる職種の求人が掲載されており、小動物臨床獣医師に関する求人を見つけにくい可能性があります。
獣医師求人サイト「アニマルジョブ」では、2024年11月時点で500件以上の獣医師求人が掲載されています。求人情報には、給与や勤務時間、福利厚生などの詳細が記載されており、複数の動物病院を比較するのに便利です。
アニマルジョブを活用し、気になる求人に積極的に応募しましょう。
2.履歴書を作成し面接対策を行う
求人に応募したら、履歴書を作成し、面接対策を行います。
履歴書において、採用担当者が重視するのは志望動機です。応募先の動物病院を徹底的にリサーチし、病院の特徴や診療方針を理解したうえで、オリジナルの志望動機を考えましょう。
履歴書の書き方については「獣医師の履歴書の書き方を徹底解説!魅力的な志望動機をつくるコツも紹介」で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
また、面接対策では、よく聞かれる質問を把握し、答えを用意しておきましょう。
面接でよく聞かれる質問は以下のとおりです。
・志望動機
・転職理由
・獣医師の経験
・将来のビジョン
獣医師としての実績やスキルを整理し、具体的なエピソードを交えて説明できるようにしておきましょう。
3.面接や実習に臨む
面接当日は、スーツを着用し、清潔感のある身だしなみを心がけましょう。また、丁寧な言葉遣いや礼儀正しい振る舞いは、採用担当者に好印象を与えるポイントです。
動物病院によっては、面接だけでなく実習を行っているケースもあります。実習は職場環境を確認できる絶好のチャンスです。
実習では、スタッフ間のコミュニケーションや、動物に対する接し方に注目してみましょう。その職場が自分の価値観や働き方と合っているかを判断するための参考になります。
小動物臨床獣医師ならではのやりがい3選

小動物臨床獣医師ならではのやりがいは、以下の3つです。
・飼い主から感謝される
・さまざまな動物と接することができる
・幅広い診療科目に携われる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.飼い主から感謝される
小動物臨床獣医師のやりがいの一つは、飼い主から直接感謝の言葉をもらえることです。
ペットは飼い主にとって大切な家族の一員であり、治療やケアを任されるのは責任重大です。しかし、治療が成功したときの達成感は格別であり、飼い主からの感謝の言葉は大きな励みとなります。
また、獣医師は動物だけでなく、飼い主にも寄り添える存在です。飼い主とのコミュニケーションを通じて信頼関係を築き、安心を届けることは、獣医師の大切な役割であり、大きなやりがいでもあります。
2.さまざまな動物と接することができる
犬や猫などの一般的なペットだけでなく、ウサギ、フェレット、ハムスターといったさまざまな動物と接することができるのも、小動物臨床獣医師ならではのやりがいです。
多様な動物の診察や治療に携わることで、それぞれの種特有の症状や治療法を学ぶことができ、知識や技術が広がります。
珍しい動物に関わりたい場合は、エキゾチックアニマル専門の動物病院に就職すると、日々の業務がより刺激的になるでしょう。
エキゾチックアニマル専門の獣医師を目指したい方は「エキゾチックアニマル獣医師になるにはどうする?転職方法や年収を解説」で詳しく解説しているので、合わせてご覧ください。
3.幅広い診療科目に携われる
小動物臨床獣医師は、幅広い診療科目に携われるのも魅力の一つです。
たとえば、以下のような分野に関われます。
・眼科
・皮膚科
・腫瘍科
・循環器科
・消化器科
複数の診療科目に関わることで、動物の健康問題を総合的に診断できる能力を養えます。また、特定の分野の専門性を深めることで、その分野に特化した獣医師として活躍する道も開けるでしょう。
小動物臨床獣医師の仕事で大変なこと3選

小動物臨床獣医師の仕事で大変なことは、以下の3つです。
・緊急対応に追われることが多い
・動物に噛まれることがある
・動物の死と向き合わなければならない
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.緊急対応に追われることが多い
小動物臨床獣医師は、緊急対応に追われることがしばしばあります。突然の事故や急病による緊急手術など、予定外の業務も少なくありません。短時間で治療方針を決定しなければならないケースもあり、強いプレッシャーにさらされます。
また、深夜や休日に呼び出されることもあり、十分な休息が取れないこともあります。不規則な勤務により、心身に負荷がかかることもあるでしょう。
2.動物に噛まれることがある
小動物臨床獣医師は、診察中に動物に噛まれる危険性があります。
動物は環境の変化や痛みに敏感で、恐怖から必死に抵抗する場合があります。普段は大人しいペットであっても、診察中は予想外の行動をとる可能性があるため、常に注意が必要です。
とくに、大型の動物は、噛む力が強く、重大なケガにつながることもあります。動物の様子をよく観察し、必要であれば防護具を使用して自身の安全を確保しましょう。
3.動物の死と向き合わなければならない
小動物臨床獣医師として働いていると、動物の死と向き合うことは避けられません。どれだけ手を尽くしても、すべての命を救えるわけではなく、精神的に大きな負担になることもあります。
また、ペットを失った飼い主の感情にも寄り添い、サポートする必要があります。
小動物臨床獣医師は、動物が亡くなった悲しみを乗り越え、気持ちを新たに次の治療に臨むための強いメンタルが必要です。
まとめ|小動物臨床獣医師はペットの健康を守るやりがいのある仕事

小動物臨床獣医師とは、動物病院で働く獣医師のことです。日本の獣医師の半数近くが小動物臨床獣医師として活躍しています。
小動物臨床獣医師の仕事内容は、動物の診察や手術、飼い主へのアドバイスなど多岐にわたります。大変なことも多いですが、それ以上にやりがいを感じられる仕事です。
小動物臨床獣医師としてキャリアをスタートさせるなら、まずは求人探しから始めましょう。アニマルジョブでは、動物病院の獣医師求人を多数取り揃えています。ペットの健康を守る獣医師にぜひ挑戦してみてください。